観劇メモ

観に行った舞台のメモや感想を書きなぐる場所。

詠舞台『蟲師』の感想。

※過去記事の掘り起こしです。

2015/3/18~29公開の、舞台版蟲師を観に行きました。テレビアニメーションのキャストで送る、新しい形の朗読劇とのことです。

率直に「よくあの世界観、雰囲気を現実のものにできたな」という印象でした。観に行って良かったです。

自分が観たのは『緑の座』『雨がくる虹が立つ』の回でした。以下感想。

f:id:sue_vavava:20160922211304j:plain

(画像は公式の事前イメージ)

【良かった点】

いい意味で原作そのまんまでした。妙な改変も無く、アニメ2本+淡幽との掛け合い。

演技が生のものである点も魅力。アニメーションから飛び出してきた感覚、むしろ生身の分それ以上。

そしてとにかく照明がキレイ。森の表現は秀逸で、複数の方向から光を飛ばすことで”森の奥深く”の雰囲気を一層感じる。

演技と映像の融合も絶妙。「書いた文字が生命をもち飛び回る」「手の中に虹が見える」といった蟲師ならではの表現を、まさか現実のものにするとは。特に「蟲を文字に封じる淡幽」はとてもよい演出だったと思う。役者の周りに、文字が浮かび上がるのだ。

加えて物販も充実、作品に寄り添ったラインナップである。そもそも蟲師グッズ自体が貴重。

【気になった点】

肝心なところでのアニメーション頼みがいくつか。「どのように具象化するのだろう」と思っていたシーン(例えば:宴のシーン/湧き立つ虹に対峙するシーン)はスクリーンへのアニメーションの投影で済まされてしまった。もっとこう、サイドの幕と照明をうまく組み合わせてもよかったのでは。

そしてなんといっても「客席が平坦で舞台が見えない」これに尽きる。スペース自体が平面、そこにイスを並べただけ。つまり舞台上がよく見えない。

「朗読劇なら…」とも思ったが、衣装や小道具も作り込まれており、すごく気になるものの見えるのは観客の頭。そもそも座って会話している場面はスポットライトしか見えなかった。

上記の「蟲封じ」然り演技と映像の融合がなされている場面があるからこそ、見えないのは惜しい。というか"舞台"としては致命的。

【まとめ】

漫画、アニメの舞台化としては好印象。むしろよくここまで出来たものだ。しかし見えないのは大きな痛手。7800円/約70分でどうかと言われると、うーん。いや、客席に目を瞑れば十分満足度高いですよ。

総じて「期待しすぎていた」感は否めないが、それでもよく創りあげたと思う。

詠舞台『蟲師』 脚本・演出:中村和明
2015/03/22(日)@スパイラルホール