観劇メモ

観に行った舞台のメモや感想を書きなぐる場所。

シアターコクーン・オンレパートリー2016『ビニールの城』を観た。

キャッチは「アングラ演劇の最高峰」
なるほどわからん!

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あらすじメモ

あらすじを書くのも難しいし、そもそも野暮ってもんですが。。。ちゃんとした解説は他所様に丸投げです。

腹話術師の青年"朝顔"が、別れていた自分の人形を探しに出るところから物語は始まる。人形と別れるというのもおかしな話だが、彼には人形の声が聞こえるとかなんとか。そのせいで周りからは「狂っている」「電気ブランの飲み過ぎ」などと言われる始末。

ポルノ雑誌の女優"モモ"は彼に思いを寄せるも、朝顔は人と関わることを極端に嫌う。すぐ隣にいるというのに手が届かない、ビニールの壁。

感想や見どころ

その①:テレビでも活躍されている方の生の演技。V6の森田さんってこんなにも繊細な芝居をするんだと驚き。「学校へ行こう!」のイメージが強いもので。モモは「スクールカースト下位だろうなあ」という印象なのに、宮沢さんの演技もあって不思議な妖艶さ。"夕一"は真っ直ぐでかっこよく、「重版出来!」で見たお調子者の荒川さんとは違った印象。

その②:昨今の商業演劇ではなかなか感じない不気味さやワクワク。昭和の見世物小屋ってこういう雰囲気だったのだろうか、演劇が"サブ"カルチャーであるのはこういうところにあるのだろうか、という感想を抱いた。アングラ時代からの役者さんも参加しているのは感慨深い。

その③:小人の役者さん。腹話術師3人組が持つ人形と同じ衣装を纏った、小人の役者さんは本当にズルい。本来動かしようのない人形を、ギミックとして活用できるだなんて。不気味さと不思議さを一層感じる。

その④:パンフレットがビニールで密封されていてまさにビニ本。いや本来のビニ本わからんけど。内容はキャストコメントだけでなく、作品の解説や用語解説、さらに初演についても触れられていてすごく豪華。腹話術指導:いっこく堂って、それだけで宣伝価値ありそうなのに。

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装置メモ

開幕時は縦3列の人形棚、高さは天井まで。ハシゴで登って人形を漁る演技も可能、奥行きはあまりない。人形棚には役者が紛れており、開幕の人形達のざわめきにひとやくかっていた。かつ、紛れていること自体が不気味。

棚背面の壁が上がってからが本番、棚が捌けバーのセットに切り替わる。上手には移動可能なバーカウンター。下手手前には大きめの池、本当に水が入っている様子。(ところでこの転換のためだけに、スラムや闇市を思わせるネオンの街並みを天井に仕掛けていたのは豪華。もっと見たかった。)

まとめ

正直よくわからんかった。それでも要所要所でグワーッとなって、いいなあとか、美しいなあとか、カタルシスっていうのかな。パンフにも「そういう楽しみ方でいいよ」的なことが書かれてあって手のひらで踊らされている状態。

アングラがどういうものか分かってきた気がする。と同時に、自分の好きなジャンルも見えてきたような。演劇というサブカルチャーが盛んであった70年代80年代の雰囲気は、自分にはどうやったって感じることはできない悔しさ。

かつて上演された作品の再演といいつつも、現在の機材や装置を用いて、劇場での上演となればもはや別物といえよう。当時の熱量はその場にいた人だけのものだし、蜷川・唐の両氏を受け継ぐ金演出の本作もまた、ここでしか味わえない。

そこに立ち会えた幸運を喜びたい。

シアターコクーン・オンレパートリー2016
芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演 『ビニールの城』
2016/08/09(火)14:00@Bunkamuraシアターコクーン