期待を裏切らない身体表現と解釈の隙を与えない圧倒的熱量で、まさに「感じろ」と言わんばかりの舞台でした。
前置き
エンドルフィン(endorphin)は、脳内で機能する神経伝達物質のひとつである。内在性オピオイドであり、モルヒネ同様の作用を示す。特に、脳内の「報酬系」に多く分布する。内在性鎮痛系にかかわり、また多幸感をもたらすと考えられている。そのため脳内麻薬と呼ばれることもある。
あらすじメモ
語り部である女性の「これはお芝居だ」というセリフから始まる。
ニコラ・テスラの発明が戦争に起用されるまでの話、
その友人が描く「トム・ソーヤ」の物語、
蘇我を討とうとする飛鳥時代の話、
画家エッシャーが世に認められる話、
それぞれの時代に生きた男たちの、嘘と覚悟の物語。とでも言えようか。
みどころメモ
身体表現の美しさ
Andendlessといえばアクションや殺陣が特徴的というイメージがあります。
オープニングのダンスは(正直よくわからなかったが)作品世界に引き込むものがあった。また殺陣のシーンはダイナミックで、主役を映えさせる振り付けになっていた。ターンをきめながら刀を振るのずるいよ。暗転中の光る剣なんてかっこよさしかない。
7人のダンサーも盛り上げ役ではなく、随所に見られるその表現力はもはや作品そのものと言えよう。
役者の演じ分け
群像劇のような構造かつシームレスに場面が切り替わる。つまり、直前まで武士を演じていた役者が次の瞬間にはドイツ軍人を求められるのだ。この切り替わり、肉体の緊張感の変化、美しい。
それに伴う衣装の着替えや交換も実にスムーズであった。装置の入替えも無駄がない。
物語が集約するカタルシス
それぞれが独立した物語でありつつ、終盤に向けて濁流のごとく混ざりあう。エッシャーの騙し絵、彼が友人についた嘘、その親友の抵抗するかのような欺き。怒涛の騙し合いがたまらない。
装置メモ
具象ではなく抽象、床は白黒のモザイクタイル状。
片面黒/片面白のパネルにはキャスターが付いている。黒面にはモザイク状に鏡が配置されており、生活における鏡としてはもちろん絵を描く様子にも使用される。白面は壁だけでなくスクリーンとして効果的に使用されていた。
ミラーシートっていうの?鏡になったパネルが数枚配置されていた。持ち運んで鏡として使用するもよし、押し倒して小道具として使用するもよし。曲げたまま抽象表現をするもよし。
ダンサーが鏡の前で舞いつつその隣で別のダンサーが鏡と同じ動きをする、なんだか不思議な感覚。パネルの下部に固定可能で、鏡を付加するだけでパネルの雰囲気が激変するんですね。
平場には5箇所ほど舞台下と通じる穴があり、蓋を外せば役者の出はけや小道具のやり取りにも使える。
天井から水が、雨が、大量に降り注ぐ演出はダイナミックでした。舞台下からの放水はズルい。あんなんカッコイイにきまってる。
まとめ
何が本当でどこからが嘘なのか、わからなくなり混じり合う。観るものを圧倒するエネルギーこそが作品そのものなんだろうと感じた。
結局なにがどういうことなのか理解の境地には至っていないが、それでも「すごい」「面白い」と思える作品だったことに間違いはない。
AND ENDLESS 20周年記念公演「ENDorphin」作・演出:西田大輔
2016/12/17(火)18:30@全労済ホール スペース・ゼロ
この日のゲストのひとりは宮崎秋人さんでした。ゲストなの!?っていうくらい役割豊富で気づきませんでしたよ。。