恥ずかしながらイキウメ作品に触れたことがなかったので。
すげえもんを観てしまった。。
あらすじ
とある都市で、奇妙な交通事故が起きる。
信号のない横断歩道を渡る歩行者・田宮尚偉(池岡亮介)のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきた。
しかし車は田宮の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したかのように大破する。
田宮は無傷、運転手の新田直樹(鈴木裕樹)は軽傷で済むが、助手席に座っていた女性は重傷を負ってしまう。
目撃者は真壁薫(瀬戸康史)と友人の秋山景杜(小島藤子)、左門森魚(柄本時生)の3人。
事後処理を担当する保険調査員・横道赤彦(勝村政信)はこの不可解な事故に手を焼き、関係者を集めて検証を始める。
すると真壁が、ある仮説を立てるのだった。
その調査はやがて、HIV患者・土呂弘光(山田悠介)、作家を目指す学生・平岡泉(八幡みゆき)、真壁の主治医・大野琴葉(千葉雅子)をも巻き込んでいく。
はじめは荒唐無稽なものと思われた仮説だったが、それを裏付けるような不思議な出来事が彼らの周りで起こり始める――。
(公式のあらすじより引用:舞台「関数ドミノ」)
見どころ
言語化できない...メモ程度に。
実力派の布陣
終始、俳優陣の実力を感じた。会話劇ゆえにすべての事象が「自然に」進行する。淡々と、ではない。
真壁という男は時折体を掻き毟る様子がみられ、その動きからも「障害の類なんだろうか」「顔に出ていないけれど感情的になっている」ことが迫ってくる。
細かい動きをごく自然に組み込み感情の振れ幅も表現する、瀬戸康史とは恐ろしい男である。
人物それぞれの思惑が交錯する物語で、陣営が同じでも個々の持つ目的は違っている。
相手が違うとセリフの距離感や雰囲気が変わってくる、この部分は徹底されているように感じた。
事故で入院中の妻を持つ田宮なんかそれが顕著で、一瞬の高ぶり・激昂への移り変わりがスピーディで、顔には出ていなくても心は燃えていることが伺える。
友情モノとしての一面
はじめは打算的に真壁へ接近した土呂。しかし時間をかけて溶け込んでいき、そこで築かれた友情は本物だろう。
自らの弱点を吐露し本音を語り合う場面には、友情の一つのあり方として、くるものがあった。
それ故に「教祖に祀られる瞬間の異常さ」もひとしおで、友情が妄信へと移り変わる不気味さも感じた。
装置メモ
左右に平台があり中央にちょっとだけ溝がある感じ。
上手にはストーブや椅子があり一人暮らしの部屋のよう。下手にはベッドがあり病室風。
ただし使い方はその限りではなく、照明・演技の中でシームレスに切り替わったり、空間が広がったりする。上手奥には電灯や風車があり、屋外の場面へと早変わりすることも。
舞台奥には大破した車のフロントが隠されており、惨状を語る一方で、内部構造や金属光沢がどこか美しい。
窓がたくさんあり、高いものは天井近くにも。
差し込む光が実にそれらしく、朝晩の違いや夕焼けなど時間の表現はもちろん、場面に合わせて光も演技をしている印象を受ける。
まとめ
「ドミノの影響でうまくいった」かどうかなんて、結果論的な部分があり結局のところ分からない。
物語自体は陰があるというか、嫉妬をはじめネガティブな感情が前にくる。
しかしながら生きることへの希望というか、「その時に備えて」ポジティブでありたいという活力をえた。
関数ドミノ
作:前川知大/演出:寺十吾
2017/10/7(金)19:00@本多劇場