00を軍事要素に絞った総集編って感じで、うまくまとまっていたと思う。この客層でストレートプレイなのはもはやボーナスポイント。
ひとまず良かったポイントだけ書いていきます。
大阪公演も終わったので追記しました。
加点方式なら3000点で大満足、減点方式ならマイナス3000点で虚無も感じた、というのが率直な感想。
3000は言いすぎた。プラスマイナス1000くらいでここはひとつ。
ちなみに東京初演の感想なので、後に改善・向上している可能性も大いにあります。
加点していくスタイル
00そのものの魅力
そもそもだけどこれ。
ピンチを乗り越える展開、キャラ立ち、そういったもともとの魅力を存分に活かした演目だったと思う。カタルシス。
オープニングの「DAYBREAK'S BELL」では1stシーズンを真摯に扱う決意を感じたし、L'Arc~en~Cielをバックに歌ったり踊ったりしないかとヒヤヒヤもしたよね。
「らしさ」を濃縮した脚本
武力による破壊と再生、をテーマにTV1期を追体験。
「TV本編以上にソラン・イブラヒムという単語を聞いた気がする」といえば伝わるだろうか。
物語の方は正直駆け足だけどそれはそれとして、必要悪としてのCBが明確に描かれていた。
アレハンドロ・コーナーを削って「CBと暗躍するリボンズ」に絞ったのも良采配。
大きな山場を「トランザム」に設定することで、脚本(上演時間)のスリム化を図れている。
メインのお話をソレビに絞るという大きな命題の前では、「沙慈がいない」「ルイスがいない」みたいなやり取りは不毛なのだ。
オリジナル要素
無理のない範囲でTV版とは違ったストーリーや新要素を取り入れていた。
トリニティにサーシェスが加入、スローネフィーアに乗って4人で行動する展開は面白い。
エクシア&GNフラッグの共闘は映像でも見てみたいし、それを凌駕するフィーアの強さも凄まじい。
生死のタイミングこそ違いはあれど、2ndシーズンと矛盾しないよう描かれているのは丁寧。
そういった細やかさに水島監督が参加している意味が出て好印象。鷲尾デザインの機体がパンフにあったり。
せっかくのメディアミックスなんだからこういうIFはアリかな。ガンダムなんてそんなもん、とも言う。
役者すごい
アニメに忠実というか、中途半端な舞台化ではない、愛を感じた。
雰囲気あるなーと思ったのは、ラッセ・ミハエル・フェルトかな。
サーシェスの窪寺さんは言うまでもない。イメージ通りの戦闘狂。声も似てる始末。
前山グラハムはただただ気持ち悪かったです(褒めてる)。
でも一番すごいのはアンサンブルだよね。
MS戦
専用の車椅子のような装置を使って、コックピットをうまく再現。レバー操作の射撃は音照もあって臨場感が出る。
MSの武装をそのまま模した剣を使ってのアクションも、よく考えられていてかっこいい。
ワイヤー武装は役者のマイムでよく表現できていたと思う。
そしてその流れるような足さばきを実現するアンサンブルの技量。
高さもあるから上で何が起こっているのか、それをどこまで把握しているのか。不安を感じさせない、今までにないアクションだったと思う。
音響ずるい
00といえば川井憲次サウンド。
これを惜しげもなく使えるのは贅沢だし、歴代主題歌も客入れに使っていて豪華。
ストーリーの盛り上がりに合わせた選曲もずるい。そもそも曲が盛り上がる。
射撃音だってそのままで。まんまとしてやられたね。
照明すごい
レーザーの使い方は上手いんじゃないのか。
緑の光線をばらまいて「GN粒子下の戦闘」は舞台だからこその演出で、それだけでも観てよかったと思える。
射撃に合わせてピンクのレーザーを投げるのも臨場感ある。
衣装すごい
コスプレ学芸会なんて揶揄する時代は終わった。
プトレマイオスクルーの衣装が劇中そのままで好感が持てる。
トリニティの3兄弟もそのまんまで「本物だー」ってなるし、蛍光オレンジのラインも照明と相まってキレイに光る。あと兄ちゃんのスパッツ。
マイスターのスーツは拳のキリキリって音がマイクに乗るから、良し悪しかな。シリアスなシーンで意図的に使えると強い。
小道具すごい
MS戦を彩る武器たち。
武装を模した剣は意匠が違って見ごたえあるし、ビームサーベルも輝きが素敵。
キュリオスのハサミがちゃんと開くの、どうなってんのあれ。軟質素材?
減点もする
脚本のはなし
駆け足すぎるのは仕方がない。
それはそれとして、印象的なセリフを詰め込みすぎたというか、無理やり放り込んだと言うか。「失敗しないと決めたのに」「俺は僕は私は」などなど。
展開の速さに感情移入が追いつかず、軽いセリフに感じられた。
MS戦の話
感情移入が追いつかないうちは「超次元車椅子チャンバラ…いきなり…」と思ってしまった。ごめん。
オリジナル展開遅い?
これは好みというか裁量かも。
舞台オリジナルの要素が出てきたのは休憩明けの第2幕から。
せっかく舞台という別メディアなんだし、1幕からオリジナルを匂わせても良かったのでは?
それまで長い間「舞台化とはいえTV放送の焼き増しじゃん…」とすら思ってしまった。
役者・アクションのはなし
監修に「Office ENDLESS」の文字があったので期待値は爆上がりですよ。
それに周辺を座付きの演者で固めてあったので。
それが、それがだよ。花形はイケメン俳優で、あろうことかENDLESSの役者さんぜんぜんアクションやらないじゃん。その高級食材を活かしはしないのかい?
ここまでのアクション監修を努め創り上げたと思えばそれはそれですごいけど…私はもっとこう、常人だと無理のあるアクションをお見せしてくれるのかとばかり…ENDLESSさんにはそういう期待が…
照明のはなし
待ちに待ったトランザムの光、その程度なのかと思ってしまった。
常時展開のGN粒子のほうが派手やん…
それとチカチカが眩しすぎてアクション見えねーってなった。
音響のはなし
というより幕間、休憩時間なんですけど。
1幕シリアスな場面で引いて、普通に『罠』を流すのは違うと思った。00のEDの中ではスタイリッシュな映像をしているので。
だったら20分近くアーアアーやってるほうがらしいっちゃらしい。
イントロではなくボーカルから入れば話は違った。
ターゲット層
結局、ターゲットとやってることがどこまで一致したのかは気になるところ。
どう考えたって女性演劇ファン(2.5界隈)なんだけど、それを「ガンダム」という畑に取り込むつもりがあるのかないのか。脚本はどう考えたってガンダム畑なわけで。
まとめ
00らしさ…ある
スタッフ・キャストの愛…感じる
ガンダム00という素材を活かした舞台だったのは間違いない。
2.5次元ファンの自分は「アリ」と言ってるし、ガンダムファンの自分も「アリ」と言ってる。けどこれが「演劇のあるべき姿か」と言ったら、疑問符が残る。
どこか「演劇で武力介入」というコトバが引っかかっているのだ。
舞台『機動戦士ガンダム00-破壊による再生-Re:Build』/脚本・演出:松崎史也
2019/02/15(金)18:30@日本青年館ホール