観劇メモ

観に行った舞台のメモや感想を書きなぐる場所。

【2.5次元】舞台ガンダム00(2nd)の感想。

率直に言うと「観にいけて良かった」です。スケジュールに変更がありながらも、どうにか上演まで来てくれてありがとう。

劇場に足を運ぶか迷ってるなら行く価値はあると思うし、00のメカや世界設定を考察するのが好きな人も楽しめると思う。

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ネタバレあります。基本的にポジティブだけどネガティブな内容も含みます。注意。

雑な感想

加点方式なら3000点の大満足、減点方式なら「ヒーローショーに減点方式とかある?」です。迷ってるなら観たほうがいい。

特に劇場で観る意味を感じたのは、GN粒子下の戦闘シーンを体感できるのと、ラストシーンにあると思う。今からチケットを取れば2階席だろうからむしろ好都合。緑のレーザーを見下ろす形で舞台を俯瞰できるのはリアルの強み。

メカや世界設定のファンも考察の素材が増えるかも。ここで1ガンダムを拾ってきたかーってなった。色変えとはいえパンフにイラストがあるのも偉い。欲を言えばスローネフィーアくらいやってほしかった。

前回の感想はこちら。

vavava.hatenadiary.com

お話のこと

3時間の総集編、00の「らしさ」を凝縮した物語だった。沙慈とルイスの関係性を軸に、ソレスタルビーイングとリボンズの対立を描く、ような展開。分かり合うことや対話といった部分が強調されていて、そうそう00ってこういう物語だったよなと、うろ覚えながら思い出した。

そこで「アニュー・リターナー」のくだりを削って、戦闘型イノベイド「イース・イースター」を登場させたのはうまいと思った。ラブストーリー的な要素は沙慈が担っているし、同時に「わかりやすい適役」として機能する。

このあたりが水島監督が監修しているから為せる技なのでは。あとパンフレットには高河ゆん作画のイースが載っててこういう細かいところは偉い。

最初のシーンが「刹那の奪還」なのも良かった。冒頭すぐに盛り上がるシーンを持ってくることで、(特にMSの表現について)こういうものなんだと提示し、熱量が高まった。前作は感情移入が追いつかずにぽかーんとしちゃったので。

サーシェスが登場しないのはいろいろなことを想ってしまう。今回の物語的には削っても成立するし、役割はネーナとイノベイド軍団に集約できるし。それでも言及があったりヘルメットが出てきたり、パンフレットに大きく写真があったりして、カンパニーにとって大切な存在であることは確かだ。

役者のこと

マイスター4人やプトレマイオスクルーをはじめ続投の演者が多く、キャラクターの存在感は良かったですね。衣装もばっちりはまってる。

特に刹那役の橋本祥平さんは劇中の時間の流れとリアルの時間の流れも相まって、成長した刹那像を作り上げているように感じた。パンフレットの橋本さん宮野さんの対談も見応えあります。

アレルヤ、ピーリス、セルゲイの身長差とか、そういうものをリアルに感じ取れるのも舞台の強みですね。

リボンズのねちっこい感じとか、最後には感情を顕にする感じとか、実にラスボスしていた。全体的にイノベイド陣営の中性っぽさが出ていたと思う。

コーラサワーはこの作品の清涼剤というか、ギャグシーンを任せられるのが彼しかいない。そして話が重いから合間合間のギャグシーンで笑える雰囲気じゃない。それでも緊張を解くだいじな存在でした。(帰りにお客さんが「お茶のシーンは日替わりじゃないんだねー」って話してたので日替わりじゃないみたいです)

何よりアンサンブルがすごい。あの暗い中で台車をぶん回して、しかも見栄えもかっこいいのはさすがendless監修のアクションシーン。セラヴィーの隠し腕とか、ハロの動きとか、細かいところで機体の一部を彩ってるのもかっこいい。

モブのパイロットとして搭乗する人もいて、スポットがあたっていなくても演技してるのは見どころだと思う。それにあの人数で同じ制服を着てズラッと並ばれちゃ迫力あるし、そういう「圧倒的物量 VS 4機」こそ00のカタルシスみたいなところあるので。

舞台装置など

紗幕だっけ、手前のスクリーン。あと六角形のパネルが3枚天井から下がる。2つの移動する大階段は、階段でありコックピットでありスクリーンにもなる。それらに映像を投影することで説明したり、エフェクトを大胆にしていた。

産業革命以降の人類の歴史~みたいな映像は、現実の紛争問題やエネルギー問題の延長にも思えて少しゾッとした。実にガンダムらしい部分だと思う。

パネルを上げながら00ガンダム(の下半身程度)を描写するのは好きなシーン。MSの大きさを感じた。量子空間や、ヴェーダの電脳空間のような、そういうアニメだからこそのシーンを表現できるのも強みですね。

でも戦闘シーンで役者の表情がカットインするのは笑っちゃった。実にガンダムらしい演出だし、表情が大きく見えるのもいいけど、リアルで見ると、ちょっと違うなと思った。演劇を観ていたら急にアニメっぽくなって引き戻されたように感じてしまった。

小道具のこと

これを観るのが一番の目的。

MSが台車な分、むしろ武器こそがガンダムの顔みたいなところがある。かっこいいし、キャラが立っているのがすごい。00ガンダムの剣がうっすら青く光ってたり、ケルディムの銃が緑に光ってたり。アリオスの剣というか角というか、あれはトンファーみたいな持ち方かな。うまい。デュナメスは銃をくるくるってするのかっこいい。

Iガンダム4人組の武器は、基本的にソレビの旧武器なのかな。キュリオスのハサミがまた見られて嬉しい。タイプエクシアのダガーが連結するのはすごい(構造すごい&役者すごい)と思いました。リボンズソードもゴージャスでいいね。

襖を切るブシドーと、通信端末を切る(物理)ブシドーは実にブシドーって感じでした。

音響照明のこと

川井憲次サウンドはズルい。追い込まれているときの絶望感、反撃時の高揚感、盛り上がらないわけがない。

ビームライフルやマシンガンの表現は相変わらず面白くて、役者の動きやレバー操作と合わせて臨場感があった。動きと光と音を合わせるのはかなり大変では。ライザーソードをぐるっと左右に振る照明はナイスアイデア。

GN粒子やトランザムの雰囲気もかなり良くて、2階席から緑や赤や青のレーザーを見下ろしながら、戦闘シーンを観るのは舞台ならではでとても好きな演出。ただここは、前回ほど迫力が無いように感じた。後期機体でインフレしてるし、当然ながら演出のピークではないから仕方ない。

チカチカして見えねーってことは無くて安心した。

個人的な見どころ

ここまでに挙げた、GN粒子と小道具と、新キャラ採用で物語をスリム化する良采配。あとはラストシーンだ。

人類の革新とは何か、人間とは感情とは、という刹那とリボンズの立ち回り。あのシーンだけは実に演劇的だった。セリフも立ち回りも。量子空間の都合、MS(台車)から開放された生身のアクションで、ラストバトル感も大きい。

ラストシーン、舞台奥の高台動くんだ・・・からの背後に花畑。その中央に4つの台車が絡み合って、ガンダム00の象徴ともいえるシーンが完成していた。引きで見るとただの台車だが、ここまで観てきた観客にとってはMSそのものである。具象でそれをやられると、なんとも言えない感動があった。横浜の動くガンダムと同じタイプの感動で、生身だから感じてしまう威圧感や神聖さってあると思う。

減点部分

公式サイトにデカデカと案内されているPDFのリンク「イオリア・シュヘンベルグからのお知らせ」これが本当に解釈違いを起こしている。(ちなみに前作は客席のチラシに挟まれていた)

劇中の「イオリアのメッセージ」は大きな存在で、ソレスタルビーイングが活動する理由とも言える。その名を冠したお知らせなのだからどんな仕掛けか、あるいはロールプレイかと見てみると、あの世界の勢力図の説明書が出てくる。

たしかに知識として事前に三国の関係なんかは抑えておきたいけれども、それはガンダムのファンを信用してなさすぎでは。あるいは役者のファンでガンダムに疎い客層に向けたものと推察できるが、それはそれで「ガンダムに真摯に向き合った舞台化、ではなく、よくある2.5次元舞台」と自分で言っているように感じてしまう。

そのあたりは脚本や演技で説明してほしいし、なんならセリフとスクリーンで説明できていた。(もっとこう、観劇マナーとか退場の分散の案内とか、我々の行動をイオリアが叱咤してくれるような内容を期待していた。)

これは完全に個人の好みだけど「ダブステ」って略称がすでに違和感ある。もちろん略称やタグが必要なのも承知だが。その4文字が、並大抵の2.5次元舞台と同列であると、自ら語ってしまっているようで悲しくなる。

まとめ

ガンダム00らしさ・・・ある。演劇でやる意味・・・ある。2.5次元の魅力・・・ある。演出も演技も間違いなく一流で、満足度も高い。

演劇の可能性を開拓している一方で、商業的というか2.5次元でイケメン俳優に頼らざるをえないというか、いまいち消化不良な部分を感じてしまう。ショービジネスを享受し消費しているだけでは、人類の革新には至れないと思えてならない。

2022/02/08(火)15:00@新国立劇場 中劇場

舞台『機動戦士ガンダム00 -破壊による覚醒-Re:(in)novation』

脚本・演出:松崎史也