ホントに裁判所だった!裁判行ったことないけど!
あらすじメモ
作家志望の青年北尾は、今日も朝早くから霞ヶ関裁判所へとやって来た。
「ご起立ください」の声、手錠の音と共に裁判官、被告、警察官が登場すると、北尾の胸は期待に高鳴る。今日はどんなグッとくる裁判に出会えるのだろう?最初はモノ書きのネタを探しに来た北尾だが、苦しい言い逃れをする被告や、巧妙に弁護する弁護人、ドSに攻める検察官、法廷に登場する人物が見せる、どうしようもない人間臭さに惹かれて、すっかり傍聴にハマってしまったのだ。
だがそんな北尾に、いつも傍聴席で見かけるツンとした女子大生日向は 「覗き見気分で傍聴に来ないでください」と冷たく言い放つ。
覗き見気分で何が悪い?
傍聴の楽しさとは他人の人生の覗き見だ!思わずそう 反論してしまった北尾は、しかしある公判を境に、裁判への考えがガラッと変わり...。
興味本位で始まった裁判傍聴の先に見えてきたものとは?
この作品は舞台上と客席の傍聴人全員が共有する疑似裁判体験である!
裁判長!ここは懲役4年でどうすか2016 オフィシャルサイトより引用
装置メモ
裁判がテーマということで舞台中央に法廷がドン!客席はそれを囲むようにセットされている。
この「裁判長・被告・検察・弁護人」という法廷そのものが回転する創りで、エピソードや主張ごとに違った角度から観ることができる。
舞台奥には高台があり椅子が並んでいる、さながら傍聴席のよう。傍聴席としてはもちろん、場面によっては高台だったり上舞台だったりと使われていて面白い。
内容メモ
弁護人、被告人、検察、、、それぞれの言い分から真相が見え、証拠によって流れが覆る様は面白い。比較対象が逆転裁判で悪いけど、快感のベクトルは同じだと思う。
そして「ああこれ、裁判員制度の疑似体験なんだな」と。そう思うとすんなり入ってくるし、いろいろ考えることも多い。
繰り広げられる裁判(エピソード)は複数ある。窃盗、放火、殺人...
「脅迫に近い取り調べじゃん」と被告人に感情移入していたら、ラストを見ると「ちゃんと証拠を押さえて犯人だと確信している」警察の様子も(ifとして)描かれていて。
多重人格のうちのひとりが殺人を犯してしまう。その場合、主の人格は意識があった?責任能力の有無はどうなる?そんな兄に対して妹は憎悪すら抱いているように見える。が、見方を変えると兄妹愛ゆえのやりとりにも見える。
こういった感情的な揺らぎと同時に、「でもやっぱり人ひとり死んでるんだよね」「自分が裁判員になった際のこと考えた方がいいよね」など、ふと冷静になる自分がいる。
役者さんの演技も迫力があった。自白を迫る警察の圧迫感は本当に怖かったし、人格の豹変する青年にも狂気を感じた。
何より「殺人」に関するエピソードも多く、その際の被告人の激昂ぶり、演技の振り幅、それはもう圧巻である。
あくまでエンターテインメントとして面白く、かつ心の何処かに危機感を植え付けるような、絶妙なバランスであった。「勉強がてら傍聴してみるのもいいんじゃない?」くらいの、別に押し付けるわけでもないところには好感が持てる。
傍聴、行ってみようかなあ。
裁判長!ここは懲役4年でどうすか/原作:北尾トロ/脚本・演出:塩田泰造
2016/10/19(水)19:00@全労済ホール スペース・ゼロ