大胆なラストシーンに向けて、ド頭から繊細に解釈を積み上げていく、凄い作品を観てしまった。
まえがき
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ダルカラ作品・・・『三文オペラ』以降、積極的に追うようにしている
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マクベス・・・新感線の『メタルマクベス』観たくらい
あらすじ、ほか
演出の谷氏のtwitterを見ていると、事前に(wikipedia程度でいいから)あらすじを見ておいてほしい、みたいな情報を得た。
書きなぐり
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幕が上がり3人の魔女。「古典」っていうより「乱痴気なキャバクラ」って印象。
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「いずれ王になる」を「会社で昇進する」ような印象に置き換えているところから、すでに仕掛けがスタートしていたとは
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台詞回しがシェイクスピアって感じでちゃんと古典してる
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随所で「現代」を感じるんだけど、セリフも(脳内の)風景も「中世」て感じで違和感がない
あと爆音とかトリップムービーとか面白かったです。
例のシーン
もうネタバレいいよね。
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ラストは長机に椅子が並んで、会議室とか記者会見風のセット。
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真ん中にスーツのマクベス。乗り込むマクダフ。
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そして「女から生まれたものには殺せない」からの、側近が、パンッ。
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マクベスにとって都合の悪い部分を不問にすることを「閣議決定」していく衝撃のラスト。
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マクダフの「なんでだよ」が全てを物語る。
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側近の黒子をバンクォーの役者さんが演じてたのも、意味を感じちゃう。
かたくなにネタバレを避けるよう呼びかけてたけど、なるほどゾッとしたね。
『福島三部作』でも感じた恐ろしさ。異化効果*1。
ほか、思ったこと。
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現代に古典をやる意味→(社会へ要求や不満など)普遍のメッセージがある
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もしかして、自分自身(の芸術や政治への立場)と向き合うこと、鏡になるのでは
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というのも、正直なところ、あのラストシーンは肌に合わない。
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それは、積極的ではないにしても、自分としては現政権を評価する部分があるからで
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(どちらかというと、野党を信用しきれてない、が近いか)
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昨今どうも、「大勢に反抗すると芸術点が高い」みたいな風潮を感じちゃうからだ。
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愛知のあれとか。左巻きのお祭りで終わるのだけは勘弁。
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話がそれた
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古典の解釈としては大いにアリだし、演劇の役割を存分に発揮していると感じた。
古典を古典としてリスペクトしつつ、エンタメとして観ることもできて、しっかり社会へのメッセージも発信する。
そして観客に生き方や世の中のあり方を訴える。
この演出家、どこまでも原作へのリスペクトに溢れてると思った。すげえや。
DULL-COLORED POP第21回本公演『マクベス』
原作:ウィリアム・シェイクスピア/翻案・演出:谷賢一/翻訳 松岡和子(ちくま文庫)による
*1:このコトバがブレヒト先生由来っていのがまた面白い